【人怖】上京1年目に遭遇した謎の老婆の怖い話

怪談

もうだいぶ昔のことなんですが、ふと思い出したので書いてみます。




東京で出会った正体不明の老婆

老婆との遭遇

確か上京して最初の年、と言うか上京して半年経った頃だったと思います。




ある日の午後、自転車で少し遠くの方まで出かけていました。




用事が何だったかは覚えていませんが、普段はあまり行かないような方面でした。




その帰り道、夏も終わり日が短くなってきたなと感じながら、まだ明るい晴れ空の下で自転車を漕ぎながら自宅に向かっていました。




その途中、とある高架下に遊歩道があり、その脇にベンチがあるのが目に入りました。




ちょうどそのベンチが日陰になっており、何となくそこで休憩しようと思いベンチの隣に自転車を停め、ベンチに腰を掛けました。




スマホをいじったりボーッとしたりしながら数分が経った頃、1人のお婆さんに話しかけられました。




身長は150cm程で腰が少し曲がり杖をついており、60代後半~70代ぐらいに見える身なりの綺麗なお婆さんでした。




これが今回の物語の始まりです。




老婆からのSOS

「カッコいい自転車だね~」「つい最近買ったんですよー」なんて他愛もない会話から始まり、しばらく世間話をしていたんですが、そのお婆さんは

  • 親戚の家に泊まったが、その親戚が出かけるため同じタイミングでその家を出た
  • 手持ちのお金が無いためひたすら歩いてきた
  • 歩き疲れて一休みしようと思ったらベンチに僕が座っていたから話しかけた
  • 自分の家の鍵を持っておらず、帰っても家に入れない
  • 同居中の孫娘が明日まで帰ってこないため、家には誰もいない
  • 携帯電話は持っておらず、親戚や孫娘の電話番号もわからない

と色々と身の上話をしてくれました。




更に話していると、

  • 孫娘が僕と同い年ぐらい
  • 孫娘は看護師として働いている

なんていうことも話してくれました。




そして、話をしている中で「最寄駅までの交通費と明日までホテルで泊まるための宿泊費を貸してほしい」と頼まれました。




自分で言うのもなんですが、僕は昔からお人好しでこの時も断ることができませんでした。




一応、近くに交番もあったので「確か交番でもお金貸してくれる場合もあったと思うので交番行きませんか?」と提案したんですが、それは嫌だと。




そして、「1万円貸してほしい」と言われ、内心「電車賃と宿泊費で1万円も要る?」とは思いましたが、出会ってから会話をしているうちに「きっとこのお婆さんはお金持ちの方なんだろうなー」と感じてはいたので、そういう方の金銭感覚なのかと妙に納得してしまいました。




しかし、その時は僕もそんなに手持ちが無く、「駅前の郵便局で下してくるのでちょっと待っててください」とお婆さんに伝え、自転車で近所の郵便局に行きATMでお金を下ろし、お婆さんの元に戻り1万円を渡しました。




そこで初めてお婆さんが名前を名乗りました。




よくよく考えればお金を貸す相手の名前も聞かずにお金を渡した僕も僕です。




相手が老人とは言え、逃げられたら終わりでした。




そのお婆さんは

  • 名前はSさん(名字のみ)
  • 某駅前にある一番大きな家に住んでいる

とのことでした。




ここで、「駅前の大きな家ってことはやっぱりお金持ちなのか」と合点がいきました。




あまり詳しくは覚えていないんですが、「もしかすると1万円だと足りないかもしれない」みたいなことを言われ、結局「3万円貸してほしい」と言われ、先程下ろした金額では足りなくなりました。




そこで僕は馬鹿正直に「もう1回お金を下ろしてくるので待っててください」とお婆さんに伝え、先程と同じ流れでお婆さんに合計3万円を渡しました。




そのお婆さんは目に涙を浮かべながら「本当にありがとう」「こんなに優しい若者がいるなんて」と、僕に対して非常に感謝してくれている様子でした。




そして、

  • 明日には孫娘が帰ってきて家に入れる
  • お金はちゃんと返すから数日後に家に来てほしい
  • 駅前の交番で「この近くで一番大きなSの家に行きたい」と尋ねればすぐにわかる

ということを伝えられました。




今思えば「返してもらう側がどうして出向かなきゃいけないんだ」という話なんですが、心のどこかで「お婆さんだし仕方ないか」という気持ちがあったんだと思います。




ベンチから立ち上がり、自転車を押しながらお婆さんと一緒に歩いて最寄駅に向かいました。




道中、「今度、孫娘も連れて一緒に3人でご飯を食べに行こう」「そうですね〜」なんて話もしていました。




少し歩いて車道を挟んで交番がありましたが、特に話題にすることもなくしばらくして駅に到着しました。




10分おきに1本ぐらいのペースで電車が来る駅だったので、自転車を押していたこともあり駅には入らず、お婆さんと別れの挨拶をし駅に入っていく背中を見送ってから帰宅の途に就きました。




自転車を漕いで2分程で帰宅。




「お婆さんが無事に帰宅できればいいな〜」と願うばかりでした。




いざ再び老婆の元へ、、、

数日後、電車で某駅まで向かうことにしました。




乗換も含めて30分程で某駅に到着すると、お婆さんの言う通り駅前に交番がありました。




交番で「この近くで一番大きなSさんという方の家に行きたいんですが」と警官に伝えたところ、「個人情報なので教えられない」と。




一瞬呆気に取られましたが、「先日Sさんという方に『この近くで一番大きなSの家に行きたい』と駅前の交番で伝えれば教えてくれると言われた」という風に伝え直しました。




しかし、やはり「個人情報は教えられないのと、そもそもそれだけの情報では調べることもできないと思う」とのことでした。




「これはやられた、、、」と思いながら交番を後にし、とりあえず駅前付近の住宅地を歩きながら一軒家の表札を見て回りました。




何軒見て回ったか、何分経ったかわかりませんが、段々と気持ちが落ち込んでいきました。




そんな中、とある家の表札を見て「この家も違うなぁ」と立ち去ろうとした時、その家の窓から中年の女性がこちらを見ていることに気づきました。




そしてその女性と目が合うと、突然「あなた誰ですか!? 何してるんですか!?」というニュアンスのことをものすごい剣幕で言われ、たじろいでしまいました。




そこで僕は「この辺りでSさんという方のお宅を探してまして、、、」と震えた声でその女性に伝えました。




「知らないわよ!! 早くどっか行って!!」と追い払われ、早々に立ち去りしばらく呆然と立ち尽くしてしまいました。




田舎から上京してきて半年しか経っていない僕にとっては、とてつもない都会の洗礼を受けた出来事でした。




もちろん全員がとは思ってはいませんが、「東京の人って冷たいなぁ、、、」と。




すっかり気が削がれてしまい、肩を落としその日は帰路に就きました。




警察署へ相談

また数日後、今度は交番ではなく自宅に一番近い警察署に出向きました。




どこの課だったか忘れてしまいましたが、「数日前に見ず知らずのお婆さんにお金を貸してしまい、そのお婆さんが見つからない」との旨を窓口で伝えました。




しばらくして担当の方が来てその方に名刺を渡され、相談に応じてくれました。




担当の警察の方には、知らない人にお金を貸す場合は

  • 氏名
  • 生年月日
  • 住所
  • 連絡先

は必ず聞くようにと言われました。




そして、手書きで簡単にでも良いから“借用書”を必ず書いてもらうようにとも言われました。




担当の方には、自分がまだ田舎から上京して半年しか経っておらず都会に慣れていなかったこと、知らない人にお金を貸すなんてことが初めてで勝手がわからなかったことなどを伝えました。




「今までの話を聞いていて、あなたがとても優しい人なのはよくわかりました」と慰められましたが、「ただ、そういう優しさに漬け込む人もいるので気をつけてください」とも言われました。




当日の出来事について詳しく話している中で、交番の前を通ったこととその時間帯を伝えると、その交番の防犯カメラの映像を調べてくれました。




しばらくして「映ってました」との報告があり、あの日、僕とお婆さんがその交番と車道を挟んで向かい側の歩道を並んで歩いている映像を見せてもらいました。




カメラの性能があまり良くなかったため、日時と僕の証言から僕とお婆さんだということはわかりましたが、顔や服装がハッキリとわかるような映像ではありませんでした。




路上の監視カメラや最寄駅の監視カメラにも映っている可能性もありましたが、大事件でもなければ調べるのは非常に難しいとのことでした。




その後も担当の方とお話させてもらい、お婆さんについては

  • 交番には行きたくないというところが怪しい
  • 今回のような手口でお金を騙し取っている人だったのかもしれない

という結論に至りました。




「何か進展があったら連絡します」「何かありましたら名刺の電話番号まで連絡ください」と言われ、警察署を後にして帰宅。




「まぁ3万円だけで済んで良かったのかなー」とあの日のことを振り返りながら、「今回のは“勉強代”だってことで」と自分に言い聞かせ、割り切ることにしました。




結局、何日、何週間、何ヶ月経っても警察から連絡が来ることはありませんでした。




あとがき

僕にはあのお婆さんが悪い人には見えませんでしたが、「本当に悪い人は悪い人になんて見えないのかも」と思うと共に、「人間って怖いなぁ」と痛感した出来事でした。




あの日以来、知らない人にお金を貸すような機会はありませんが、

  • 初対面の相手とは一旦距離を置く
  • 人にあまり優しくしすぎない
  • お金の貸し借りは証拠を残す

ということを心に留めています。




あの時、僕がお婆さんに氏名、生年月日、住所、連絡先をしっかりと聞いていれば良かったのか。

聞いたところで教えてくれていたのか。

聞いている最中に「それなら大丈夫です」と言われ立ち去られていたのか。

個人情報をすべて教えてもらい、後日再開できてお金を返してもらえていたのか。

教えてもらったものの虚偽の情報だったのか。




あのお婆さんが最初から僕を騙そうと思っていたのか、その気は無かったけど結果として僕にお金を返せない状況になってしまったのか、今となってはわかりません。




あの日、

  • 普段行かない方面に出かけたこと
  • もうすぐ帰宅できるのにベンチで休憩したこと

がもしかすると何かに導かれてしまっていたのかもしれません。




長くなりましたが、皆さんもくれぐれもお金の貸し借りにはお気をつけください。






アース
アース

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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